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青空のブルース
2013-06-07 Fri 17:18



 地球が二つに割れゝばいい、 

 そして片方は洋行すればいい、 

 すれば私はもう片方に腰掛けて 

 青空をばかり 

              中原中也(--この小児) 


こどもの頃、友人Aと遊んでいて駄菓子屋アンデルセンに行った。 
そのあと、公園に行ってアイスを食べることになったのだけど、 
カップアイスだというのに、Aはなぜかスプーンをもらってなくて 
彼はちょっとしたとまどいのあとに、どうどうと手で食べだしたのだった。 
はじめて見るその光景はたのしくもあり、異様だった。 
ひとさし指と中指をスプーンのように使うその姿は、 
なにかを食べるカニにも似ていた。 

Aは手をべたべたにしながら「インド人はカレーを手で食べるとばい」と言った。 
さすが博識のAだ。ぼくは「物知りだなぁ」と思いつつも、同時に 
「しかし君の食べてるそれはアイスであってカレーではない」
と冷静に思ったけれど、 言いとどめた。 
そんなAの目はスターウォーズにでてくるイウォークのようだったから。 
それはあまりにもきれいに透きとおっていた…… 

その晴れやかな午後、Aはメガネを上級生に踏まれてフレームが折れた。 
なんか、そういう運命なんだなと思った。 
そうやって地球はまわっていくんだと。 



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スター・ムツゴロウ
2013-06-06 Thu 22:47



ムツゴロウこと畑正憲さんの番組をひさしく見ない。 
放映自体されてないのか、たまたま自分が見逃しているだけなのか 
わからないけれども、ムツゴロウさんといったら、 

「珍獣猛獣がいる外国の飼育所を訪問し、いさめる飼育員をかたわらに 
 ムツゴロウさんが徒手で近寄って、その動物を服従させる」 

という一種のカタルシスを含んだパターン化された場面があって、 
ヨ~シヨシヨシヨシッと呪文をつぶやきながら動物をさするムツゴロウさんの前で 
クロヒョウがゴロンと仰向けになった瞬間というのは 
ジャッキー・チェンが中国マフィアのボス役を倒したときと似たような感動がある。 
その場面の度に自分までが誇らしいような気分になったものだった。 

無敵のムツゴロウさん。 
こどもの目に映るその人は、シュワルツネッガーやスタローンとおなじく、 
まちがいなくスーパースターだった。 

ある日、いつものようにムツゴロウさんの番組を見ていた僕はビックリした。 
ムツゴロウさんがこれまたいつものようにライオンと戯れようとしたときに、 
あっさりと指を食いちぎられてしまったのだった。 
百獣の王はまるでウインナーでもかじるようにあっさりと食いちぎった。 
僕は目を疑った。ショックだった。 
スーパースターが敗北するだろうか? 

このとき少年は現実を知った。 
無理なときは無理なのだとさ。 


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たくろうと僕 〜憧れのステーキ弁当編〜
2013-06-06 Thu 17:57


幼馴染みのたくろうの言葉で、今でも強く記憶に残っていることがある。 
あれは小学校3年生のころ。 
サーファーが伝説のビッグウェーブを語るように、彼は言った。 

「500円貯めて、ほか弁のステーキ弁当を食べるとばい」 

その表情は夢を語る男のそれだった。 
子供が自腹でステーキ弁当を食べることを夢のように語る……
戦後ではない。ときはすでに平成だ。 
おこづかいは、プラモデルや駄菓子に使うことがきまっていたぼくの世界は、 
そのたくろうの言葉によっておおきく揺さぶられた。 
どちらかというと縦揺れだった。 

なんとかして、たくろうにステーキ弁当を食べさせたいと思った。 
その結果、たくろうの持っている本を売って、
お金を得ることを思いつく。名案だ。 

マンガ本もまた宝物に違いない。しかし、ステーキの為ならば…
たくろうはステーキ弁当を食べたい一心で、 
家中のマンガ本をさがし、ちょうど20冊の本が集まった。 
その表情は決意した男のそれだった。 
ぼくも我がことのように興奮していた。…たくろうがステーキ弁当を食べる!! 

たくろうは緊張しつつ、光り輝くマンガ本を古本屋主人にわたす。 
しかし、店主は無情にもいいはなつ。 

「19冊で100円やね。1冊は破れてるから買い取れん」 

!!! 
それはあまりにも想定外の買値だった。 
放心していたのか、ぼー然としたたくろうはそのまま100円を受け取った。 
「打ちひしがれる」という言葉の意味を、 
たくろうの姿によってはじめて知ったような気がした。 
ふたりはそれぞれ、社会のきびしさを背負って無言で家に帰った。 

その日のぼくの晩御飯はすきやきだった。 


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たくろうと僕
2013-06-05 Wed 21:41
放課後に幼馴染のたくろうと遊んでいたら、UFOを目撃した。 
信じない周囲にかまわず、 
ぼくら2人のなかではそれは間違いなくUFOだった。 

学年が上がりクラスが変わっても、 
たまに下校時に一緒になったときなんかは、 
きまってそのUFOを見た話を2人のあいだでくりかえした。 
「ほんとうに見た」ということを忘れたくなかったのだと思う。 

たくろうの住まいは、市営団地の斜向かいの棟の一階だったが、 
ある日、外からたくろうの家を見ると、誰もいなくなっていた。 
カーテンもたんすもテレビもマンガ本も無くなり、 
たくろうもたくろうのお母さんもお父さんもいなくなっていた。 
おそらく転校したのだろう。 

カラッポになった部屋を、外から見るたびに、 
こどもの頃のぼくの中では、 
たくろう一家はUFOに連れ去られていたことになっていた。 
そして遠いどこかに行ったたくろうを思うたびに、 
えたいのしれない恐怖にみたされた。 

こどもの頃というのは、 
純粋な経験とともに恐怖した記憶も多い。 
学校の先生や、近所の大きい犬、上級生、ふるびた神社、 
底の見えない深い川や夜の通学路、変なおじさん、 
いろんなものが怖かった。 
だからこそ、神秘的な話がいっぱいある。 

おとなになるにつれ、そういう「こわいもの」はだんだんと減っていく。 
成長とともに、体もおおきくなり、年を重ね、ちからも獲得して、 
彼らを理解してしまう。 

こんな詩があったことをおもいだす。 


   『あのときかもしれない』  

     そのときだったんだ。そのとき、きみはもう、 
     一人のこどもじゃなくて、一人のおとなになってたんだ。 
     「なぜ」と元気にかんがえるかわりに、 
     「そうなってるんだ」という退屈なこたえで、 
     どんな疑問もあっさり打ち消してしまうようになったとき。 

                     
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魚釣りの秘訣
2013-01-02 Wed 23:10
小学生の頃、東中川君というクラスメイトがいた。
彼は魚釣りが抜群に上手かった。
例えば、友達数人で近所の川に釣りに行く。ぜんぜん釣れない。
しかし東中川君だけは爆釣である。
なぜ彼だけがそんなに魚が釣れるのかいうと、
それはひとえに餌に理由があった。
彼は家でオリジナルの練り餌を毎回作ってきており、
その練り餌が魚たちを虜にしてしまうらしいのだ。
もちろん皆はその練り餌の作り方を知りたがった。

「その餌、どがんやってつくっとや」
「秘密ばい」

教えてくれないのである。
何度も聞かれる東中川君。しかし絶対に教えてくれない。
それでよかった。小学生なんてそんなものだ。
魔法の練り餌に羨望の眼差しをむけつつもわいわいやっていた。

しかしあきらめない人物がいた。
少年pipopanその人である。

ある日、東中川君の隣に陣取ったpipopan少年は、
東中川君がよそ見をしていることを確認すると
タッパーに入った魔法の練り餌をひとつまみし、口にいれた。
これが子供の恐ろしさであり、純粋無垢な無鉄砲だった。
口の中に広がる芳醇な香り……まずい。ゲロマズだった。
俺はその場で嘔吐した。

少年はその日少しだけ大人になった。


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